勘違いのキス

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 円 巳はウキウキしていた。
 自分の彼女 京口さくらと今からデートするから。
 久しぶりのデートだった。
 なぜならば、お互い忙しかったからなどではなく、
さくらがいつも巴の誘いを断るからだ。
 巳が「今度の日曜どこか行こう」と言うと、
さくらは「ヤダ」「めんどくさい」「眠いから外出ない」である。毎回。

 しかし昨日は状況が違った。
 誘ってもいつものように断っていたさくらだが、西園寺の一言でコロッと態度を変えた。

「さくら、たまにはデートぐらいしなさい」

 そして巳とさくらはデートすることになった。
 いくら巳が説得しても今まで全くのらなかったうえ、
最初に「えっ、凛華とデート!?」と喜びながらさくらが訊いたのは納得いかないが、
こうしてデートできるようになったのは嬉しい。
 素直に西園寺に感謝しよう。
 そう思いながら巳はさくらを三十分待っている。
 しかし彼は気にしていなかった。

 だが。

 やっと、さくらが現れたと思ったとき、
全く知らない男とキスしているのを見たら、
気にしないわけにはいかなかった。

「さくら! 今の何だ! オイッ! そこの男待て!」
 しかし男は軽やかに去っていった。
 追いかけたいところだがさくらを置いていくわけにはいかない。
 こいつは少し目を離しただけでフラフラといなくなる。間違いなく
 さくらのほうをジロリと睨むと、やつはのほほんとした顔をしていた。
「オイさくら! 何だ今の男は!? 何でキスしたんだ!」
 巳が怒鳴ると、さくらはめんどくさそうに答える。
「今の人? 知らない。なんかね、アスカさんと間違えてキスしちゃったんだって」
「アスカって誰だ?」
「さっきの男の人の彼女」
 さくらはそう言って欠伸をした。
 巳はブチ切れる。
「何でおまえはそうのほほんとしてるんだ! 少しは慌てろ!」
「別にいいじゃん。キスぐらい」
 そして歩き始めた。

 ……いいじゃんキスぐらいだと? 俺たちもまだしたことないっていうのにか?

 フツフツと、怒りが沸いて、いや生まれてくる。
 前を歩くさくらの肩を掴む。
「じゃあ、俺がおまえにキスしてもいいんだな」
 そう言ってキスをしようとしたら、

さくらが顔面をグーで殴った

「何すんの! 最悪! 最低! 鬼畜生! トモちゃんの
変態!
 そう言ってさくらは猛ダッシュで去っていった。

 何でだ!?

 巳は一人残され、しばらくそこに呆然と立っていた。




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