HOME NOVEL TOP NEXT『時期はずれのクリスマス』
「トモちゃん甘いもの好きだっけ?」
めずらしいことに、さくらのほうから話しかけてきた。
だが俺は質問の内容に眉を顰める。甘いもん……そんなもの
「大嫌いだ」
「じゃあ別れよう。バイバイ」
さくらはそのまま去っていった。
こうして俺たちは別れた。
……んなわけねーだろ。
「ちょっと待て! さくら! いったいなんなんだ!?」
「わっ、トモちゃん。追いかけないでよ。二度と話しかけないで。私は甘いものが好きな彼氏をみつけるんだから」
「意味わかんねーんだよ。それにおまえなんかと彼氏になるやつがこの地球上にいるか!」
俺以外。
はっきり断言できるのは嬉しいことか、悲しいことか。
「じゃあ宇宙人の恋人見つけるからいいです」
走り出すさくら。おまえが俺に足で勝てるわけねーだろ。
手を伸ばして首根っこを捕まえた。
それでも往生際悪くジタバタする。
俺はまるでいたずら好きの猫を捕まえた気分になった。
「で、さっきのはどういう意味だ?」
「さんまのまんまですー。はなしてー。トモちゃんの変態ー」
また言った!
俺は変態という言葉に傷つき、つい手を離してしまった。
さくらは西園寺に駆け寄る。
「えーん、凛華助けてー」
「ちょっとさくら、くっつかないでよ」
ダメージを受けながら、ヨロヨロとさくらに近づいた。
こんなことでへこたれる俺じゃねえ。
「さくら、で、どういうことなんだ?」
「なにが?」
なにがじゃねえ!
おまえはニワトリか!? 三歩歩いたら忘れるのか!?
そのとき、俺に助け舟が出された。
さくらがいつも凛華凛華と言っているのは気にいらねえが、おまえにはいつも助かっている西園寺。
「もしかして『ミルフィー』のこと?」
「ミルフィーってなんだ?」
「駅前のお店よ。今日から恋人のお試し期間とかいうので、ケーキバイキングがあるの」
「恋人のお試し期間ってことは……」
「恋人たちしか入れないの」
なるほど。わけがわかった。
つまり、さくらはケーキバイキングに行きたいがため、俺に甘いもの好きかと訊いたわけか。
少しは説明しろっつーの。
……というか、俺はケーキに負けたのか?
少し沈みつつもすぐに立ち直った。
こんなことでへこんでいたら、さくらの彼氏はつとまらねえ。
「さくら。その、ミルフィーとかのケーキバイキングに行くか?」
西園寺に抱きついていたさくらが顔を上げる。
「え? でもトモちゃん甘いもの嫌いじゃないの?」
「大好きだ」
「でも、さっき大嫌いって……」
「気のせいだ」
「ほんと? わーい、やったあ」
さくらの笑顔が見れた。
それだけで十分だ。
……なんていってる場合じゃなかった。
結局俺は、何とか無理やりケーキを食べ、吐きそうなのを我慢した。
ほんっとに気持ち悪かった。
二度とケーキなんぞ見たくねえ。
だがまあ、さくらのケーキを食べているときの幸せそうな顔を見れたのだからよしとしよう。
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