二人きりになれなくて

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「おい、さくら。口に生クリームついてるぞ」
 昼休み、さくらがまた何かやらかして校長室に呼ばれた。
 やっと帰ってきたと思ったら、なぜか口の周りに生クリームがついてる。
 何してきたんだ? こいつ。
「あ、ほんとだ。ラッキー」
 何がラッキー?
 そう思ったが、どうせくだらないことだろうから訊かなかった。
「さくら、何してきたの?」
 西園寺がさくらに訊ねる。
「校長先生にお説教されてきた」
 そう言って、ふんふんと鼻歌を歌いだすさくら。
 お説教されたのがそんなに嬉しいのか?
 んなわけない。
「さくら、おまえまた何かしただろ」
「え? 何もしてないよ」
 ふざけるわけでなく、本当に何もしていないという顔でさくらは答える。
 嘘はついてないだろう。
 だがこいつの場合、さくらが何もしてないといっても、大概周りに迷惑をかけている。


 と、突然校内放送をつげる音がなった。


京口さくらぁ! 今すぐ校長室に来い! 今すぐ!

 その怒鳴り声と共にブツリと放送の音が途絶える。
 教室中がシーンとなって、みんなさくらを見る。
 今の放送の声は校長だ。何で校長が放送を……。
「あれ? 何で私、また呼び出されたんだろう?」
 さくらは呑気に首を傾げる。
「やっぱり何かやらかしたんだろう」
 俺はため息と共にそう言う。
「えー。何もしてないって。きっと校長先生がさっき怒った分を忘れて、また同じことで私を怒ろうとしてるんだよ」
 それはない。
 いくら校長が老人だからって。
「とにかく、さくら、校長室に行きなさい」
 西園寺がそういうと、さくらは渋々と言ったように「わかった」と言う。

「京口、また何かやったのか!?」
 知らねえ声がすると思ってみたら、さくらの前に顔面蒼白といった、クラス委員長が立っていた。
 名前は知らない。
「やってないと思うんだけどなぁ」
 また、さくらは首を傾げる。
「京口、頼むからこれ以上問題を起こさないでくれ」
 委員長は必死でさくらに頼む。
 こいつも大変だなぁと、他人事ながら同情した。

 と、そのとき。

 突然教室に怒鳴り声が響いた。

うらぁ! 京口さくらはそこかぁ!

 誰かと思って、ドアのとこに立っている人物を見たら、
それは校長だった。
「あ、校長先生」
 さくらがまたもや呑気にそう言う。
あ、じゃないわい! 京口さくら! 今度という今度は許さん!
 校長は真っ赤になってさくらを怒鳴りつける。
「校長先生、あんまり怒ると血管ぶっちぎれちゃいますよ」
「誰のせいだと思っとる!」
 校長はさくらに掴みかかろうとする。
 委員長がそれを必死で抑える。
「こ、校長先生、落ち着いて」
「これが落ち着いていられるかぁ!」

 ガラリとまたドアが開く音がする。

 そこには息を切らした担任が立っていた。
「こ、校長先生どうしたんですか?」
「時任君! 君はこの小娘にどう教育をしとるんじゃ!」
「小娘って私?」
 さくらは相変わらず落ち着いている。
 おまえちょっとは慌てろって。
「校長、京口が何かしたんですか? 京口、おまえ一体何をしたんだ?」
「私、何もしてませんよ」
「嘘を吐くな、小娘! 
わしのショートケーキを勝手に食ったじゃろ!

「「「「「 は? 」」」」」

 教室中が口をぽかんと開ける中、さくらはポンと手を打った。
「ああ、いただきました。おいしかったです」
 さくらは語尾にハートマークをつけ、幸せだというような笑顔で校長に言う。
「当たり前じゃ! あのケーキはわしが一時間並んで買ったもんじゃぞ!」
 何か、一気に話がくだらない方向に進んでる。
「どうりですっごくおいしかったです」
「感想なんか聞いとらん! あのケーキ、すごく楽しみにしとったのに……!
 おまえが食って、わしは食べれんかったんじゃ!」
「でも一口残しておきましたよ」
そういう問題じゃない!

 この後も、ずっと校長のくだらない怒りは続いて、授業は出来なかった。
 結局さくらが、校長の知らない、とてもおいしいケーキ屋さんでショートケーキを買ってくるということで決着はついた。

 くだらねえ。





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