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おわり
かなり、疲れた。
息を切らす。
もし、公園に戻ったとき、犬塚くんがいなかったらどうしようかと思った。
だけど、彼はいた。
大量の缶ジュースと共に。
ガサリゴソリとビニール袋を鳴らしながら犬塚くんに近づく。
犬塚くんは、少し赤くなった目を見張る。
「吉田……おまえ、帰ったんじゃ……?」
「何で?」
「え、何でって……俺を嫌いになったから……」
「ならないよ」
そう言って、私は「はい」と、両手に持ったコンビニのビニール袋を彼に差し出す。
「こ、このぱんぱんに膨れ上がったビニール袋は?」
「お菓子」
彼は少し大変そうに大量のお菓子を受け取る。
私は、ベンチに座る。
「この大量のお菓子はコンビニで買ってきたの?」
「うん」
「何で?」
「…………」
わからない。
何でこんなに多くのお菓子を買ったんだろう。
ああ、そうだ。笑いながらお菓子を食べて、リンゴジュースを飲む犬塚くんが思い浮かんだんだ。
犬塚くんが笑うかと思ってんだ。
「犬塚くんが、喜ぶかと思って?」
「へ?」
彼は不思議そうな、気の抜けたような顔をする。
途端、私は心配になった。
涙がこみ上げてくる。
「う、嬉しく、なかった?」
「え、あ、嬉しい……って、吉田!? ……泣いてる?」
泣きたくなかった。
でも涙を止めることができない。
犬塚くんには素直にとか言って、泣けばいいって言ったのに。
「よ、吉田……」
彼は立ち上がってオロオロする。
笑ってほしいな。
「い、ぬづかくん、わらっ、て」
途切れ途切れになりながらも何とか言えた。
「へ? 笑って?」
「うん、笑って」
犬塚くんは、「こうか?」と、ぎこちなく口角を上げて、眉を寄せる。
「……おもしろい顔?」
「ヒドッ!」
そうショックを受ける犬塚くんに思わず私は笑い出す。
一度笑い出したら止まらなくなった。
お腹が痛い。
「吉田……おまえな……」
怒っているような呆れているような犬塚くん。
「ご、ごめん……わ、笑いが……止まらなくて……お腹が…痛い……」
いつまでも笑っている私の頭を犬塚くんが撫でた。
驚いて笑いが止まる。
バッと、犬塚くんの顔を見上げてみれば、彼は笑っていた。
「好きだよ」
思わず言ってしまうと、
犬塚くんはふんわりと微笑んだ。
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