正確にいうと床だが、地面にへばりついたのは本日二度目である。
何で私は、こんなに地面にキスせなあかんのやと、朔は中途半端な関西弁で怒りを表す。
キス…………キス?
キスってなんだっけ? ああ、キスって唇が触れるとか、どうとかこうとか、まあ、そういうわけで……うん。
そうか、私って、地面に愛されてるのね……。朔はすぐそこにある床を見つめる。と……。
「おい」
これまた本日二度目。言葉が降ってきた。同じ声。同じ言葉。同じ奴からだ。
「おい。大丈夫か」
おそるおそる上を見る。思ったとおりの顔があった。
さらさらな黒髪。今は少し乱れている。
切れ長なつり目。目つきが悪いとそう感じた。しかし。
きれいだと思った。
うん。まあ、今なら女子生徒が騒ぐわけがわかるなと思った。
「てめ、聞いてるのか。大丈夫かと言ってるんだ」
声のトーンが下がった。そういえば私喋ってなかったっけ、と今更ながら朔は気づいた。
「あ、はい。大丈夫です」
朔はゆっくりと起き上がる。頭は打っていない。手首も足首もくじいていない。無傷だ。
椅子から落ちたというのに……さすが転び慣れているな。
朔は妙なところで自分を褒めた。
「そうか。手当てはすんだ。もう授業は始まっている。教室に戻れ」
都崎が立ち上がる。
授業……ああ、そうか。すっかり忘れていた。一時間目は確か体育だった、と朔は思い出す。
「はい。ありがとうございました」
朔は頭を下げ、靴のところへ戻ろうとした。
と、ドアのところに少年が一人。
見覚えがある。朔はそう感じた。
少年はにっこりと朔に微笑む。
男とわかっていながら、美少女だなあ、と失礼な感想を朔は持った。
その美少女は微笑みながら、ゆっくりと口を開く。
「いいのかな。教師と生徒がキスなんかして」
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