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8. めんどくさいこと



 一瞬にして教室が静まった。

 が、それも一瞬のことだった。

 宮下は更に朔に近づき、もう一度声をかける。
「朔、大丈夫?」
 かなり顔と顔の距離が近い。
 美少女に見られると緊張してしまう。
「え、あ、う、うん。大丈夫」
 顔をひきつらせて、どもりながらも朔は答えた。
 そんな彼女に宮下は、極上の笑顔を見せた。
「そう、よかった。じゃあ、またね。朔」
 と、言って去っていく彼。
 朔も自分の席まで戻った。

 が、何やら様子がおかしい。
 ひそひそ話をみんなし、朔のほうをチラチラ見てくる。
 チラチラどころか、突き刺すような視線を向けるものもいる。
 何か、めんどくさそうなことになりそうだ。
 朔は小さくため息をついた。



 授業中もひそひそ話と視線は向けられていた。
 二時間目終了後、朔はろくに先生の話を聞いていないにもかかわらず、どっと疲れてしまった。
 思わず顔を伏せる。
 向けられてくるいくつもの視線の理由は、きっと宮下君だ。
 朔がそう考えていたとき、頭上から名前を呼ばれた。

「園山さん」

 あきらかに恵利ではない。
 顔を上げてみれば、自分の机の周りには数人の女子が取り囲んでいた。
 本当にめんどくさいことになってきた。
 今度はため息をつかず、眉間にしわをよせた。




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