何とかする前にまた、宮下に話しかけられてしまった。
「朔、今日一緒に帰らない?」
またもや静まる教室。やめて欲しい。
「ごめん。今日恵利と帰るから」
「恵利? ああ、花山さん?」
そう言って彼は恵利のほうを向く。
「花山さん。今日朔と二人で帰りたいんだけど、駄目かな?」
少し困ったように、哀しそうに訊く宮下。
朔から彼の顔は見えないが、クラス全員の表情から容易に想像できる。
頼むから、断ってくれ。
そう友人に願い、祈ったが無意味だった。
「いや全然! どうぞどうぞ、一緒に帰ってください!」
そう言って友人は朔を宮下のほうに突き出した。
そこまでするんかい! と友人を恨みながら、朔は宮下のほうへと向かうことになった。
「ありがとう、花山さん。じゃあ一緒に帰ろうか、朔」
そう言って朔の腕を掴む宮下。
そして突然走り出した。
「は!? ちょっと待って宮下君! 突然なんで走り……」
出すの? とまで訊けなかった。
朔が途中でこけたからだ。
「わっ。朔大丈夫?」
大丈夫、と朔はうなる。
廊下でこけたため、血は出ていない。しかし打撲とこすれて火傷した。
はっきり言って痛い。
しかしそんなことはどうでもよかった。
「朔、ごめん」
「いや、別に大丈夫。それよりなんで走るの?」
そう訊くと宮下は変色しだす朔の膝を見ながら答えた。
「ごめん。朔のこと、考えてなかった。朔が転びやすいって、知ってたのに」
そうですか。知っていましたか。有名ですか? と自嘲気味に思う。
何で自分はこんなに転びやすいのだろう。
はぁっとため息をつく。
「朔、ごめんね」
「ううん。ホントに大丈夫」
歩けないほどじゃないし、と思って立ち上がる。
「それより宮下君、何で走り出したの?」
「え、あぁ。たぶん、誰かついてくるんだろうなって思って」
へ? と後ろを振り返る。
居たよ。
うじゃうじゃと後ろに人がいる。
女子生徒だけでなく男子生徒までもいる。
なぜ居る!?
朔は呆然と立ち尽くした。
が、そんな暇もあまりなかった。
「宮下君、何あれ?」
「わかんない」
わかんないってあんた。
「たぶん、僕らの後を付けようとしたんだと思うんだけど」
ありえない。
しかしそんなことに驚いてる暇はやはりない。
「宮下君、走ろう!」
「でも、朔。走ったらこけるんじゃ……」
「大丈夫! こけないように走る!」
何が大丈夫で、何がこけないように走るんだろう。
後で考えたら自分でそんなツッコミを入れたと思う。
だけどそんなもんを気にしているわけにはいかなかった。
奇跡的に朔がこけることはなかった。
そして彼女らは何とか撒くことが出来た。
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