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3. 付き合って



「朔? おーい、朔? 聞こえてる?」
 ハッと気がつけば、目の前にどアップで宮下君の顔があった。
「へ? あ、いや、聞こえてるよ、たぶん」
 段々声が小さくなりながら朔は言った。
 何やらぼんやりしていたようだ。
 必死に言葉を紡ぐ。
「白昼夢でも見てたみたい」
「白昼夢? 朔っておもしろいね」
 今度は宮下が笑う。
 朔はよかった、と安心する。
 元に戻っている。かわいらしい笑顔に。邪悪なオーラは消え去っている。 
「なんかね、宮下君が協力がどうのって言ってね」
 夢だと思った。いやそうであってほしいと、確かめたかったのかもしれない。
「ああ。それは夢じゃないね。現実だよ」
 願いはあっさり崩された。
 逃げることは、きっと叶わないだろう。
 朔は覚悟を決め、宮下に訊ねた。
「協力って、何?」
「朔、都崎先生好き?」
「は?」
「都崎先生、好き?」
「す、好きじゃない」
 全く予想しなかった質問に驚くが、一応答えられた。
 好きではないと。
「じゃあ嫌い?」
 よくわからない宮下からの質問が続く。
 都崎が嫌いということだろうか。
 朔は今度の質問は、さっきの質問より考える時間が少し必要だった。
 嫌い。
 きらい。
 キライ。
 どうだろうか。
 好きじゃないのは確かだが、嫌いかと訊かれると少し困る。
 都崎のことは、嫌いというか、苦手というか、嫌いと苦手を足して二で割ったような感じというか、適切な言葉が見つからなかった。
「わからない」
 出てきた答えはそれだけだった。
 ふーん、と宮下はつまらなさそうに言う。
 だがすぐににっこりと笑ってみせる。

「朔、都崎先生と付き合って」

 意味がわからない。

「ど、どういう意味?」
「え、そのまんまだよ。都崎先生と付き合って。あ、言っとくけどちょっとそこまで一緒に行ってとかいう意味じゃないからね」
「誰が?」
「朔のほかに誰がいるの」
「宮下君」
「……朔?」
 どうやら宮下君は少し怒ったようだ。
 だけど私だってそろそろ怒り出してもいいはずだ。
 もういい加減にしてほしい。
 だからそう言った。



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