「朔、どうしたの? さっきからボーっとして?」
「え? あ、あれ!?」
気づけば手元に親子丼があった。
見渡せばここは食堂。
あれ?
朔は首を傾げる。
「もうお昼休みなの?」
「朔、なに言ってるの」
あー、もうお昼なんだ。
いつのまに。
朔は親子丼を食べだす。
「朔はいつも親子丼だね」
「うん、まあ」
無意識に頼んでいたとは言うまい。
なぜか記憶がとんでいる。体育のことなんか全く覚えていない。
覚えているのは、都崎と廊下ですれ違ったとこまで。
もうボケてきたのかな、と朔は少し落ち込む。
「園山さん」
突然話しかけられた。
後ろから声がする。
振り向いてみれば、知らない女子生徒たち。
「何か用ですか?」
「あなた、このまえ宮下君に馴れ馴れしくした子でしょう?」
馴れ馴れしくしたのはあっちですけど。
と、声に出していた。
「なによ! あんた、何様のつもり!?」
あなたこそ何様のつもりですか。
と、今度は声には出さず、我慢した。
「宮下君には近づいちゃいけないのよ!? しかも都崎先生にまで馴れ馴れしくして……!」
いつ私が都崎に馴れ馴れしくした。
朔はもう怒りを通りこして、呆れていた。
いやそれより、こんな少女マンガに出てくるようなことが本当にあるんだなあと思った。
こういう人たち本当にいるんだ、まるで珍しいものを見るようにしげしげと女子生徒たちを見る。
かなり失礼なことだが、お互い様だと朔は思うことにした。
「ちょっと、聞いてんの!?」
いきなり肩を掴まれる。
朔はさすがに何もしないわけにはいかなくなって、席を立つ。
「離してください。ここ、食堂だから、かなり人いますよ」
女子生徒は手を離して、周りを見る。
朔も改めて回りを見渡す。
あー、人がたくさんいるなー、と思いつつ、こちらを見ている人もたくさんいることに気づいた。
確かにあれだけ声を荒げている人がいたら見てしまうけど、そこまでまじまじと見なくていいのに。
朔は前にいる女子生徒に目を戻す。
女子生徒はチッと舌打ちをし、覚えてなさいと言って、食堂を出て行った。周りの女子生徒も同じく。
すっげー。ドラマみたい。
という感想をもち、朔は席について親子丼を食べだす。
「朔、今の一体何なの……?」
「知らない」
すっかり冷めてしまった親子丼はいつもよりおいしくなかった。
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