体育館裏、体育館裏。
体育館裏に急がなければ。
恵利を、助けなければ!
全速力で走る。
だが、足がもつれて転んでしまった。
派手に転び、思いっきり足も手も擦りむいた。
だけど彼女はそんなのに構っている暇はなかった。
早く、体育館裏に。
朔は、すぐ立ち上がろうとした。
だが。
上から、誰かに押さえつけられる。
「逃げようたってそうはいかないんだから!」
この声は、先ほど朔を取り囲んでいた女子生徒の声。
わけのわからないことを、と思いつつ、朔は力いっぱい立ち上がろうとした。
「離して!」
「離すわけないだろ! バーカ!」
「後でいくらでも殴ってもいいから! 今は離して!」
そう朔が声を上げると、一瞬女子生徒の力が怯んだ。
朔はその瞬間立ち上がり、走り出す。
女子生徒は驚きながら転ぶ。
「あっ、待て!」
待つわけがない。
とにかく、速く恵利のところに。
もう少しで、体育館だ。
急げ!
急がないと……!
体育館裏に着いた。
恵利は? 恵利はどこに……!?
見つけた。
五、六人立っている女子生徒のなかに、一人だけ座っている生徒。
恵利だ。
泣いている!?
「恵利!」
朔は、恵利の許へ走った。
さっきまで走るたびに傷口が痛んだ。
今は、とても感じない。
怒りしか、感じなかった。
「恵利!」
恵利に近づこうとしたとき、誰かが朔の身体を押さえる。
誰?
恵利を取り囲んでいた女子生徒たちだった。
「なんで園山が此処にいるの!? 助けに来たとか? ばっかみたい!」
さっきの女子生徒たちと同じように嘲り笑う。
だが今の朔にとってその笑い声は、所詮気づかなかった者から発したどうでもいいものだった。
気にするのは恵利だけ。
後はどうでもいい。
「園山、結構派手にやられてんじゃん。痛そー!」
さっき叩かれて赤くなった朔の頬を指で弾く。
一瞬、痛みが走った。だけどどうでもいい。
「離して」
気づかなかった者にやっと目をむけ、朔は睨む。
「何睨んでんだよ!」
また頬に痛みが走る。
今度は平手打ちされたようだ。
「朔!」
恵利の声が聞こえる。
恵利は、無事なのか?
何とか恵利のところへ行こうと、力を振り絞ったとき、
急に体が軽くなった。
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