BACK TOP NEXT


4. 助っ人登場




 上に乗っかっていた女子生徒の重みがなくなった。

 見上げてみれば、相変わらず不機嫌面な都崎がいた。

「おい、大丈夫か?」
 周りからは悲鳴やら、何で都崎先生が、とやらの声が聞こえる。
 何で、都崎が此処に……いや、それより
「恵利!」
 朔は恵利の許に駆け寄る。
「恵利……大丈夫……?」
 やはり恵利は泣いていたみたいだ。
 涙の後がある。
 でも傷はないようだ。
 叩かれてはないらしい。
 恵利は、震えている。
「だ、大丈夫……」
 震えた声で、何とかそう彼女は答える。
 朔は、泣きそうだった。
 自分のせいで恵利をこんな目に遭わせてしまった。
「恵利……ごめんね……」
 謝ったって、どうにもならない。
 でも朔は謝るしかできなかった。
「朔、ホントに大丈夫だから……。それより朔は? 顔、赤く腫れてる……」
 そう言って恵利は朔の顔を覗きこむ。
「へ? わたし? わたしは、大丈夫。ほら、怪我し慣れてるから」
 そう言って口角を上げた。
 痛い。口の中に痛みが走った。切れているのかもしれない。
 ばかなこと言わないでよ、そう言って恵利は笑った。
 恵利が、笑っている。
 よかった。
 全身の力が抜けた。


「おい、園山大丈夫か?」
 都崎の声がする。
 そういえば都崎が此処にいたような。
 振り返ればやはり都崎。
 そしてやはり相変わらずの不機嫌面。
 周りを見れば、驚いている子や泣いている女子生徒。
 前を見れば恵利。
 恵利、よかった。
 更に肩の力を抜く。
「さ、朔、答えなくていいの?」
 何が?
 あ、都崎が何か言っていたような。
「先生、何か言いましたっけ?」
「……もういい。とりあえず、保健室に行くぞ」
 急に身体が浮いた。
「はひぇ?」
 何だ!? どうしたんだ!?
 もしかして都崎に、担がれている?
「ちょ、ちょっと先生下ろしてください」
「足を怪我しているだろ」
 いや、確かにそうだけど。
 別に歩けないわけじゃない。
 しかも肩に担がれて、ちょっとおなかが苦しい。
 必死にじたばたするけど、都崎は全く下ろそうとしない。
 朔はそのうちあきらめた。
 お姫様抱っこよりはマシだ。
 そう思うことにした。



BACK TOP NEXT


Copyright(c) 2004 soki all rights reserved.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送