放課後だからそこまで人はいないはずだけど、ぞろぞろとまるで行進のようなものは目立つ。
朔は都崎に担がれ、その横に恵利が、そしてその後ろに取り囲んでいた女子生徒たち。
やはり目立つ。
何となく居心地が悪かったが、やっと保健室に着いたので朔はホッとした。
やはりぞろぞろとみんな保健室に入る。
全員が入り終わったところで、ガラリと保健室の扉が開いた。
入ってきたのは宮下だった。
「朔!」
宮下はすぐさま朔に近づく。
「朔、ひどい怪我……どうして、僕のせい……?」
朔は宮下に訊かれても、何も考えられなかった。
今日は、いや最近はいろんなことがありすぎた。
都崎とは事故があったし、宮下には……あまり口に出したくない。
その上、宮下に呼び捨てにされたというだけで、大勢の注目を引いた。
そして今日、連れ出され叩かれ、自分のせいで恵利までもがひどい目にあった。
それまで、何もない平々凡々な生活を送っていた朔は疲れてしまった。
宮下君のせいなのだろうか?
朔は心配そうな宮下の顔を見ながら、ぼんやりとそう思った。
「み、宮下君、あの、私たち……」
「君たちがやったの?」
怯えた顔して見る女子生徒たちを、宮下は睨む。
「ご、ごめんなさい! でも……!」
「だって、園山さんが……!」
「宮下君に無理やり近づいて……!」
次々に声を上げる女子生徒たちに宮下が何か言おうとした。
それより先に都崎が叱る。
「うるさい。怪我していない者は保健室から出てけ」
すぐには動かなかったものも、みんなしぶしぶといったように保健室から出て行った。
すると保健室に残った者は、都崎と朔だけだった。
あれだけ居たのに怪我をしたのは自分だけだったのかと、少し朔はショックを受ける。
もちろん誰かに怪我して欲しかったわけではないが、自分の怪我をする度合いに改めて朔はため息を吐く。
都崎は朔の前に座り、黙々と作業をする。
頬にシップを貼り、膝の傷口を洗って、消毒する。
手当ての間、二人は何も話さない。
都崎はもともと寡黙な人だし、傷ついた生徒を励ますなどということをする人ではない。
朔も沈黙が苦手という人間ではないし、くたびれておりとても会話するような気にはならなかった。
そのかわりずっと都崎の顔を見ていた。
頬の手当てをするときも、都崎はずっと怪我を見ていたので、朔と目が合うことはなかった。
都崎は不機嫌面、というよりずっと無表情だった。
何の表情も浮かばない都崎の顔はきれいだが、人間味があまりなかった。
冷酷という印象を与えそうな都崎の顔を、朔は何も思わず見ていた。
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