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7. 送る




「終わった」
 ガラリと保健室の扉を開け、都崎はそう言った。
 それと同時に、保健室の中に女子生徒たちがなだれ込んできた。
 まだ帰っていなかったのかと冷ややかな目で見る朔に、女子生徒たちは飛びついた。
「ごめんなさい! 園山さん!」
「もう二度とこんなことしないから!」
「許して! 園山さん!」
 次々と襲い掛かるように、謝る女子生徒たち。
 朔は驚いて後ろに下がったとき、ツルリと滑ってしまった。
 ――転ぶ。
 そう思ったが、背中を誰かに支えられた。
「また転ぶ気か」
 都崎だった。
 すみませんと朔は急いで立ち直す。
 吃驚した。
 心臓がバクバクする。
 しかしまた違う意味で心臓がドキンと鳴った。
「園山さん、大丈夫!? ごめんなさい!」
「お願い! 許して!」
 もう半分泣いているんじゃという勢いで謝る女子生徒たち。
 怖い。一体どうしたんだ。
「べ、別にもういいけど、恵利に、もう二度とあんなことしないで」
 恵利を傷つけた憎き人たちなはずなのに、あまりの勢い強さに朔はそれだけしか言えなかった。
 女子生徒たちは今度恵利に飛びつきそうな勢いで、謝っている。
 本当に、よくわからない人たちだった。


 遅いからもう帰れと、女子生徒たちは全員帰された。
 保健室に残っているのは、都崎と朔と恵利と、そして宮下だけだった。
「おまえたちも帰れ」
 都崎が言う。
 確かに遅くなった。
 この時期だからまだ日はあるが、時計を見たら結構遅かった。
「朔、送る」
 宮下が言った。朔は驚いたがすぐに断った。
「いいよ。恵利と一緒に帰るから」
「女の子だけじゃ危ないよ」
 宮下と一緒でも、ある意味逆に狙われやすい気がしたが、勿論口には出さなかった。
「朔、私は一人で帰れるからいいよ」
「な、何言ってるの!? 恵利一人で帰ったら、誰かに狙われるかもしれないでしょ! だから送る!」
「いや、それは朔も一緒だし……」
 恵利の言葉を朔は聞いていなかった。
 一人で帰るなんてとんでもない! 危なすぎる!
「俺が送ろう」
 都崎の低い声が聞こえた。
「どっちをですか?」
 宮下が少し訝しげに聞く。
「園山をだ」
 朔は都崎の口から自分の名前が出て、少し緊張した。
「僕が送ります」
「足を怪我しているから、車のほうがいいだろ」
「朔は、僕が送ります」
 きっぱりと言い切る宮下。
 何でだろうかと、朔と恵利は不思議そうな顔をする。
 結局、朔を宮下が、恵利を都崎が送ることになった。
 そのことに朔は眉を寄せて都崎を見る。
「何だ園山、その顔は」
 都崎も負けじと、というわけではないだろうが眉を寄せる。
「都崎先生が恵利を送るって、何か心配で」
「……そんな心配するな」
「すみません」

 でもまだ少し心配だった。




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