『朔と仲良くなりたいって思ったんだ』
この宮下の言葉がどれぐらい本当かわからない。
結局彼の目的は、全く別のことだったのだから。
でも、いくらかは、本気だったのかもしれない。
朔はあのとききっぱりと断った。
何も知らない人間に、仲良くなりたいと言われてもどうすればいいのかわからない。
でも、もしそう言ったのが宮下ではなければ、その場に押されて頷いていたかもしれない。
結局、朔も宮下を特別扱いしていた。それも、たぶん悪い意味で。
すっかりみんな、朔も恵利もカレーライスたちも黙り込んだなか、ラーメンが恨みがましいような感じで、朔に言った。
「宮下君と、あなたの関係は一体何なのよ」
他の三人はこれまでのように次々と叫ぶわけでなく、みんな黙って朔を睨んだ。
朔は考えた。
宮下と自分の関係。
クラスメイト。
それから他に何があるだろう。
きっとそれが、朔が特別≠セという点。
他の人と違う、何かの関係。
宮下は仲良くなりたいと言っていた。
朔はそれを断った。だけど今、宮下のことを考えている。
宮下のことを気にして、悩んでいる。
ああ、そうか、これはきっと……。
「……ち」
朔はかすれた声で言う。
女子生徒たちは何? と言う。
「友達!」
朔は叫んだ。
そして走り出した。
宮下君と自分は友達。
これが、朔の出した結論だった。
食堂を出て、しばらく走り続けたとき、後ろから「朔!」と呼ぶ、声が聞こえた。
朔はその声に立ち止まり、転んだ。
「さ、朔! 大丈夫!?」
やはり声の主は恵利だった。
恵利を忘れていたなんて……今日の自分は本当にどうかしている。
朔はゆっくり立ち上がる。
「大丈夫。それよりごめん、いきなり走り出して」
「謝らないでいいんだけど、どうして走ったの?」
「宮下君のとこに行こうと思って」
宮下と話をしないといけないと思った。
それしか考えられれず、走り出していた。
「そう。朔、宮下君と友達って本当なの?」
「わからない。わたしが勝手にそう思っているだけかも」
今、思いついたのだ。
宮下が同じように朔を友達と思っているかはわからない。
「私、朔と宮下君は付き合っていると思って……ううん、何でもない。それより、昨日のこと黙っていてごめんね」
「昨日のこと?」
「宮下君が言ったことをそのまま朔に話すと、朔がショックを受けるかもしれないってずっと考えていたんだけど……私の勘違いだったみたいね。ごめん。朔、頑張って」
恵利の言っていることはあまり理解できなかったが、ずっと恵利を悩ませていたのことはわかった。
ごめんと、謝ろうとしたが朔は
「ありがとう」
と言った。
恵利はにっこり笑う。
朔も、自然に笑った。
朔は、宮下のいる教室まで走る。
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