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9. 都崎と女の人




 朔は恵利に、雪人と友達になったいきさつを話した。
 恵利はよかったね、と喜ぶ。
 ついでに朔は、昨日雪人から送られた顔文字付きのメールを見せた。
 恵利は宮下君って、意外にかわいいんだねーと笑った。
 かわいくない。
 朔はまだ昨日のメールについて少し怒っていた。


 今日は休日。
 朔と恵利は話題になった映画を見に行っていた。
 今はその映画を見て、昼ごはんをどこで食べるか考えつつ、街を歩いているところだ。
 街は休日なので混んでいる。
 人が多い。
 朔はさっさとこの人ごみを抜け出したいと思っていた。
「ねえ、早く適当なところで食べようよ」
「でもおいしいところがいいでしょ」
 朔は黙る。
 人ごみは嫌いだ。しかしおいしいものは食べたい。
 人の混む学校の食堂でも、朔が毎日食べにいく理由だ。
「なんか、ここらへんにおいしい店があるって、聞いたんだけど……って、あ!」
 どうしたんだろう、と朔は恵利を見る。
 もしかして「おいしい店」はここらへんにないのだろうか。
 恵利は目を見開いている。
「どうしたの?」
 朔が訊くと、恵利は向こうを指で指す。

「あそこに都崎先生がいる!」

 朔も驚いて、恵利が指している方向を見る。
 都崎が、いた。
 教師だって街に出るのは当たり前だが、まさか会うとは思っていなかった。

 しかも。

 都崎の横には女の人が歩いている。

 茶色で長く、さらさらな髪をしている。
 遠くからなのであまりよくは見えないのだが、美人だということはわかった。
 とてもキレイな人。
 周りの空気さえも違って見える。

 腕を組んで歩く二人は一体……。
 女の人は楽しそうに笑っている。
 都崎は学校にいるときとかわらぬ仏頂面だが、いつもと違う雰囲気が違って、やわらかい気がする。
 二人はとてもお似合い≠セった。

 都崎の周りの人は、みんな立ち止まってその二人を見ていた。
 美男美女のカップルは歩くだけで人目をひく。

 都崎の、恋人だろうか……?

 朔はただ呆然と都崎と、女の人を見ることしかできなかった。

 ずっと見続けていたが、都崎が朔たちに気づくことはなかった。




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