「ひっぱちゃって、ごめんね。余裕をもって遊園地に着いたほうがいいと思ってさ。って、朔? どうしたの? ボーっとしているよ」
「あら、もしかして気分が悪いとか? もう酔った……とかはないわよね」
「それはないだろう。体調が悪かったのか? 園山」
雪人と三原玲子と都崎が朔を窺う。
朔は、固まる。
ちょっと待て。何で都崎とその恋人の三原玲子さんが居るんだ?
だって、今日は遊園地に雪人に誘われて………雪人?
そうか。そうだ、雪人だ。
いつだって始まりは雪人。
無理やり引きずり込むのは雪人。
全部雪人が原因だ。
そして奴は隣に座っている。
「朔、まさかほんとに気分が悪いとか? だいじょうグぇッ」
朔は雪人の襟元を掴む。
「雪人、これはどういうこと? なんで都崎…先生がいるの?」
「……俺がいたら悪いのか?」
いや、そういうことじゃな…くないけど、それより今は理由を……。
「あら、雪人くん言っていなかったの? それは驚くわね。いきなり学校の保健室の先生がいたら」
「そういえば伝えてなかったね。今日のチケットは玲子さんからもらったんだよ。四枚あるから僕に二枚くれるっていうんで、朔を誘ったんだ」
「あなた朔さんというの? かわいい子ね。雪人くんの彼女かしら?」
美人な人にお世辞を言われても微妙……じゃなくて、わたしが雪人の彼女!? 冗談じゃない!
「あはは、違います」
笑顔で否定する雪人。
その笑顔はどこかムカつくと思いながら、朔も頷く。
友達です、と二人の声が重なる。
「仲がいいのね。二人とも付き合ったりしないの?」
「まさか。ありえませんよ。ねえ、朔」
「そうだね。絶対にありえないね。というかそんなの何があっても嫌」
それは言いすぎなんじゃないの、と雪人。
うるさい。こんな奴と付き合いたいなんていう人の気が知れん。
わたしは今、怒っているんだ。
そう思いながら、朔は車を運転している都崎を睨む。
「園山、なぜそんなに睨んでいる」
ミラー越しに相変わらず眉を寄せながら、都崎が朔を窺う。
「睨んでいません。もともとこういう目つきなんです」
きっぱりと嘘をつく朔に、保険医は「そうか」と言って、ミラーから目をはずす。
あっさり納得されて少し傷つく。
「あら、そういえば紹介がまだだったわね。そうはいっても私だけね。私は、三原玲子といいます。一応隣の仏頂面な人の恋人です」
仏頂面は眉間に皺をよせ、口を開く。
「……一応とは?」
「だって、まだ結婚してくれないんでしょ。お互いそろそろいい齢だっていうのに……」
「おい、そういう話は」
「わかってる。ごめんなさいね。えっと朔さん、でしたね?」
朔は、都崎の恋人に笑いかけられ、戸惑いながら視線を外しつつ答える。
「はい。園山 朔です」
よろしくね。玲子って呼んでくれると嬉しいわ。
そう言って更に微笑みかける玲子に、朔はただハイとしか言えなかった。
この人が都崎の恋人。
とても、きれいで、優しそうな人。いや、きっと優しい人だと思う。
雰囲気も表情も声も、全てが優しい。
その後車内で、朔はずっとぼーっとしていた。
主に雪人と玲子が、遊園地に着いたら別行動、でもお昼は一緒に食べようなどと決めていたのを、ただぼんやりと聞いていた。
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